「生活のリズムは正しいですか?」

仕事の残業など様々な事情で夜遅く夕食を摂る人が増えています。そうして朝は食欲がないといって食べずに出勤される方も多いようです。平成18年の「国民健康・栄養調査」によると、夕食の食事時間が午後9時以降になると答えた人が20歳から40歳代で3人に1人、午後11時以降という人も7%以上いたという調査結果でした。一方、子供たちも塾通いなど夜更かしが顕著になってきています。睡眠不足や朝食欠食など不規則な生活は脳の発達にも影響を与え、学業の低下、対人関係にも問題が生じるケースがあるようです。この夜型の生活によって、体のリズムが乱れているというメカニズムが解明されていますので紹介します。

夜型生活がなぜ悪い?

理由1:夜は活動量が少なくエネルギー消費量が低いので、夜遅く摂取して余ったエネルギーは脂肪に蓄えられやすい。

理由2:夜間は昼間に比べて食事誘導性熱産生が低い。食事をすると消化吸収に伴って体が熱を発散します。食べると体が温まったり、汗をかいたりするでしょう。このときにエネルギー消費が行われています。この消費エネルギーは、朝が一番高く夕方に徐々に減り、夜中に最も低くなります。夜遅く食べたものは体温発生にも使われず、ひたすら脂肪に変わってしまいます。

理由3:BML-1(ビーマルワン)の影響です。BML-1とは体内時計を調節する機能のある蛋白質です。近年、注目の時計遺伝子のひとつで、体内時計の調節と体内脂肪を貯蔵させる司令塔のようなものです。それが最も多くなるのが夜10時から2時ごろです。そのため夜遅い食事は脂肪をため込む指令が最大となり、太りやすくなるのです。そのほかに、夜遅く食べると、翌朝胃のもたれで食欲がなくなる、寝ている間に胃腸の働きが継続して睡眠障害が起こる、逆流性食道炎も頻繁に起こりやすい、などの不利な点があります。

生活のリズムが乱れるとなぜ悪い?

私たちの体にはリズムがあります。たとえば体温、血圧、睡眠、その他の生命活動を始め、周期的なリズムが有ります。日周リズム(概日リズム:おおよそ24時間という意味)、週周リズム、月周リズム、年周リズム(季節リズム)、90分リズム(睡眠リズム)などがあり、生活環境の変化に速やかに対応しているようです。特に日周リズムにおいては、(下表)を参照してください。これらの生体リズムが皆さんでは順調に作動しているのでしょうか?

項目 最高値を示す時間帯 項目 最高値を示す時間帯
体温 昼すぎ 運動能力 夕方
記憶力 正午ごろ 睡眠ホルモン
(メラトニン)
夜暗くなって分泌
味覚(塩辛、甘み) 成長ホルモン分泌
唾液分泌 夕方 免疫機能
胃酸の分泌 午後8時 脳梗塞好発時間 午前6から8時


大事にしなければならないこれらのリズムですが、現実では夜更かしに代表される生活リズムの乱れ、朝食の欠食と日中の活力の低下などによって、健康を阻害する羽目に陥っています。

生物には生体リズムがあり、その基本を作っているのが時計遺伝子といわれ、人では25時間の概日リズムをつくっています。放置しておくと夜更かしの方向にずれていきます。それをリセットし地球の一日である24時間に調整しようとする体の仕組みが、朝の強い光と朝食なのです。朝食を抜くと体内時計がリセットされにくく、体のあらゆるリズムが乱れます。また就寝前の食事から長時間の空腹を経た後に食べる朝食の刺激は、体全体に目覚めを伝える信号として重要です。それが快便をもたらし、快食を促します。このリズムをおろそかにすると脳の活性化が図れなくなり、欠食児童の成績が低下していることの一因とも考えられています。

また朝食を抜いた大人では血圧の変動、ホルモン分泌異常に影響を及ぼし、生活習慣病発症の大きな因子になるといわれています。大切なのは、早寝、早起き、朝日を浴びる、朝ご飯をたべることです。

とは言うもの仕事、遠距離通勤、子供の塾通い、いろいろな理由で夜遅く夕食を摂る人が多く、わかっていても生活を大きく変えるのは難しいのが現実です。

夕食が遅くなってしまう人へのヒントです。「夕食時、一度に食べずに職場と自宅に分けて食べる。夕食を作りながら朝ごはんの準備もする。外食、中食を組み合わせ、食事を賢く選ぶ。塾通いの子供には弁当の準備をする。」いろいろな方法がありますが、ご一緒に対策を考えていきませんか?いつでも管理栄養士に相談してください。

 【管理栄養士:藤原】

(参照文献:栄養と料理 第74巻12号 第76巻12号、時間栄養学 女子栄養大学出版、)