防災心理

地震や津波などの災害に直面したとき、人は特有の心理状態に陥り、行動してしまうことがある。その時の心の動きを防災心理と呼んでいるが、この防災心理をうまく制御して被害を少なくしようと提唱されている。

人間は一人でいるときに緊急事態が発生すると、すぐに自分の判断で行動を起こす。しかし複数の人間がいる時には「周囲に人がいるから…」という安心感のために、緊急避難行動をとるのが遅れると指摘されている。

よく引用されるのが韓国地下鉄火災現場での右の写真。車内に煙が充満しているのに乗客達はじっと座っている。このような事態になってもなぜ避難せずに座り続けているのだろう。「異常事態が生じても回りに人がいれば大丈夫だろう」と思い込んでしまう傾向があると指摘されている。一人でこの車両にいれば、すぐさま逃げ出しただろう。また地下鉄の火事など、めったやたらに起こるはずがないという心理も働く。そう思うことで自分を安心させようとする傾向もあるようだ。

こういった防災心理のために避難が遅れ、災害に巻き込まれやすいと指摘されている。普段と異なる事態が発生していると気づいたとき、「回りに人もいる」とか「そんなはずはあるまい」といった根拠のない理由付けで判断をせず、的確な情勢分析のもとに行動する必要性が指摘されている。

よく似た事象を記載した徳島新聞夕刊の記事(平成23年4月6日)を以下に引用する。 

【坂東】

引用文献:『人は皆「自分だけは死なない」と思っている』山村武彦(宝島社)『人はなぜ危険に近づくのか』広瀬弘忠(講談社α新書)『人はなぜ逃げおくれるのか』広瀬弘忠(集英社新書)