食品による窒息〜しっかりかんで事故予防を!〜

毎年、年末年始の時期になると、お餅をのどに詰まらせることによる窒息事故が報道されます。しかし、食品による窒息は年中起こっており、そのほとんどは歯が生えそろう前の乳幼児とそしゃく機能が低下する高齢者です。毎年4,400人前後(1日約11人)の人が食品による窒息で亡くなっています。これは、交通事故死よりも多いと言われています。

窒息は、のどで物が詰まって気道をふさぐことで起こります。気道の内径は小児では約1cm前後、大人では約2p位なので容易にふさいでしまいます。

原因食品は、グラフのようにお餅以外にもほとんど私たちが毎日食べている物です。一般に口の中でもかたまりのままでばらばらにほぐれない食品は注意が必要です。厚生労働省研究班の実験結果で、お餅は実際に口に入れる時の50〜60℃より口の中で体温に近い40℃位まで下がると硬くなり窒息しやすく、こんにゃくゼリーも、冷やして食べる方が硬くて窒息しやすいというデータを発表しています。また、カステラや芋のように水分が少なくパサパサしているもの、かまぼこやちくわなど弾力があるものも窒息の要因になります。

窒息事故の予防は、食品の特徴を知って、しっかりかんで飲み込むことです。よくかむことは、肥満解消にもなり健康余命も長いと言われています。

万が一窒息した場合・・窒息には、空気の流通が全くない完全閉塞とわずかに流通がある場合があります。流通があれば、苦痛表情の他「ウー」「アー」といった声を発するので周囲の人もわかりますが、完全閉塞の場合は、声はなく、青ざめた顔色、窒息した人に共通な「手をのど元や胸元に持っていく」といったしぐさをします。これらのしぐさも意識が消失するとなくなります。窒息時の対応は、詰まったものを取り除く以外にありません。口の中をのぞいて見えればかき出します。見えない時は、頭を低くさせ背中を強くたたいたり、後ろから両腕をおなかに回して腹部を突き上げるなど応急手当を試み、ダメな場合は、救急車を呼んで下さい。

日本ではお正月にお餅を食べることは風習であり、また楽しみにもなっています。しかし、お餅は窒息事故の危険性が高い食べ物であることを頭において美味しくいただきましょう。

何よりも予防を万全に事故のない楽しいお正月を、そして健やかな一年でありますよう、お祈りいたします。              

【臨床検査技師:田中・宮原】

窒息対処の豆知識

窒息してのどに詰まったものが取れないとき、掃除機での吸引が有効なことがあります。もちろん尖端のブラシははずし、状況により先細(さきぼそ)の吸引管に取り替えます。舌を吸わぬよう上手に行ってください。救急車が到着するまでの間に試してみてもよいと思います。

【坂東】