フランシスコ・ザビエルの日本人観察

ウォーキングに関する調べものをしていて、面白い記述を見かけました。スペイン人の宣教師であるザビエルの手紙に、日本人の歩き方の特徴として「腕を動かさない」と記されているというのです。腕を動かさない歩き方といえば、ジョージ秋山作「浮浪雲」の主人公で、いつも着物の中に腕をいれて歩く浪人を連想していただければわかるでしょうか?なぜ日本人は腕を振らずに歩いたのでしょう。
ウイスキーの好きな人はご存知と思いますが、ジョニ赤・ジョニ黒と呼ばれるジョニーウォーカーのウイスキーには下図のような図柄がトレードマークとして描かれています。昔のデザインとはだいぶ変わってきましたが、私が注目している点は変わっていません。前方に出る足をピンと伸ばし、ステッキを振りながら胸を張り、腕を振って歩いています。学生時代にこの絵をみて、イギリス人はなんと無理な歩き方をするのだろうと思ったことでした。

しかし、革靴を履いて石畳の上を歩いた人達と、草履や下駄を履いてぬかるんだ地面を歩いた私達日本人の祖先では、歩き方が異なったのであろうということに最近気づきました。手と足が交互に動く現在の歩き方ではなく、右足が出たときに右手が前にでる、いわゆる「ナンバ歩き」も日本の路面では有効であったのだろうと想像しています。阿波踊りの手足の運びも同様ですね。 

こういったことをもう少し詳しく調べようとして、『ザビエルの見た日本』(講談社学術文庫)と『聖フランシスコ・ザビエル書簡抄(上・下)』(岩波文庫)を読んでみました。キリスト教布教に対するザビエルの強い信念や思いはたくさんつづられていたのですが、残念ながら日本人の歩行に関する記述は発見できませんでした。しかし、ザビエルが見たその当時の日本人の食生活について、非常に興味深い記載が書簡第27にありましたのでお知らせします。

「日本人は自分等が飼う家畜を屠殺することもせず、また食べもしない。彼らは時々、魚を食膳に供し、米や麦を食べるがそれも少量である。但し、彼らが食べる野菜は豊富にあり、またわずかではあるが、いろいろな果物もある。それでいて、この土地の人々は不思議なほどの達者な身体をもっており、稀な高齢に達する者も多数いる。従って、たとい口腹が満足しなくとも、私達の体質は僅少な食物によって、いかに健康に保つことのできるものであるかは、日本人に明らかに顕れている。」

ザビエルの詳細な観察に驚くとともに、科学とは無縁の460年前にもかかわらず、我々日本人の先祖達はなんと賢明な食生活を送っていたのだろうと、感嘆しました。生活習慣病に悩む現代の私達をご先祖様がご覧になれば、さぞかし驚かれることでしょう。なお、健康維持のための効果的なウォーキングについて、きちんと説明、指導できるよう、看護師共々鋭意努力中であることもお伝えしておきます。

【坂東】

 
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