熱中症を防ぎましょう 

周囲を海に囲まれている日本の夏は気温が高く、体温を超える日もあります。また湿度も高く蒸し暑い気候が特徴です。全国各地で6月から8月の平均気温を過去30年ほどの推移でみると、日本の夏が徐々に暑くなってきていることがわかりました。この傾向は大都市部では一層明らかで、いわゆるヒートアイランド現象も重なり、気温の上昇が助長されています。皆さんも記憶に新しいと思いますが、2007年の夏、埼玉県熊谷市と岐阜県の多治見市において、気温40.9度という日本の観測史上最高の記録が更新されました。そしてその年に熱中症で亡くなられた方が923人と、過去最高になってしまいました。これらの記録を教訓と警告と受け止め、暑熱環境での服装、行動、体調に注意し、熱中症を防いで下さい。「節電の夏」ですが、「熱中症の夏」に注意していただくよう、熱中症のイロハについて記します。

熱中症とは 

高温多湿な環境において、体内の水分及び塩分(ナトリウム)のバランスが崩れたり、体内の体温調節機能が破綻するなどして発症する健康障害の総称、をいいます。

熱中症の主な症状 

明らかに異常な症状があるときにはわかりますが、ちょっとした異変のときに、周囲が気づくことが重要です。頭痛、吐き気、めまい、たちくらみが熱中症の初発症状であることもあります。顔が赤くほてったり、普段と異なる動作をしてみたり、呼びかけても反応が鈍くなったりすることがあります。おかしいと思うときにはこの時期、熱中症を疑って下さい。

熱中症の救急処置 

意識がなくなっていれば直ちに救急車を呼ぶべきです。そうでないときにはまず涼しい場所に移動させ、衣服を脱がせて身体を冷やし、水分を取らせます。水分を自力で摂取できないようなら、直ちに医療機関に運んで下さい。自分で判断できないときには救急搬送した方が無難です。

熱中症から体を守る工夫 予防対策 

1) アルコールの飲みすぎに注意しましょう
暑熱な環境下でアルコールを飲みながら体を動かしていると、脱水になります。アルコールには利尿作用があるので、失った水分をアルコールで補給するのは誤りです。

2) 睡眠不足、二日酔い、朝食の未摂取などは体力の消耗により、熱中症を引き起こす原因となります。睡眠を十分にとって疲労回復に努め、体調管理をしましょう。

3) 襟元を解放することで、体表面の熱気を出すことができます 
直接皮膚にあたる下着は吸水性に優れた綿素材がいいでしょう。近年開発された吸汗・速乾素材や軽涼スーツを活用するのも効果的です。TPOに合わせて、色調は日光の輻射を受ける黒色系を避け、白色系を選ぶ方がいいでしょう。

4) 暑さの原因を取り除くことも大切です
地面からの輻射熱を抑制する対策として、打ち水や散水が効果的です。水が蒸発する時には湿度が上昇するので、朝の早い時間帯がお勧めです。また、可能な範囲で朝夕の涼しい時間帯に作業を変更する、直接日光が当たらないよう簾(すだれ)、カーテン、ブラインドなど日よけを工夫する、その際に風を遮らないように注意する、といったことも大切です。高い位置に扇風機を設置し、気流とともに蒸発しやすい微細なミストを噴出させて気温を下げる方法もあります。水を体表面に霧吹きでかけることも有効と考えられます。水分100mlが体表面で蒸発すれば体重70kgの人の体温を平均1℃下げる効果があるそうです。 

5) 同じ気温でも湿度が高いと熱中症が発生する危険性が高い
気温が上昇すると気化できる水分量が多くなるので、除湿機で湿気を取り除くと暑さも和らぎます。うちわや扇風機などで人体に風を送る事は、衣服の表面や内部の空気を換気し、体温低下に効果があります。湿度が高い環境では汗が蒸発し難く、したたり落ちる汗は体温調節には無効です。

6) 急に蒸し暑くなったり、作業に慣れていない場合は、作業開始3日目ぐらいまで無理は避けましょう
慣れない作業をし始めた時に、熱中症が発生しやすくなると指摘されています。暑い環境での活動は自覚症状の有無にかかわらず、定期的な水分補給と休憩を心がけましょう。休憩が取りやすいように、冷水ポットやクーラーボックスなどのドリンクを用意し、横になれるスペースや長椅子の準備も効果的です。休憩時間は作業服や靴を脱いで体表面に水をかけたり、頭から水を浴びたりすると涼しさも感じられます。

7) 空調(エアコン)からの冷風が体表面に直接当たらないようにしましょう

入眠後の気温が28度以下にならないよう、タイマーを利用し温度設定の工夫をしましょう。
人間の体は24度以下の空調の風に触れると皮膚表面の血管が収縮し、熱が放散できなくなり却って体温が上がってしまいます。空調(エアコン)をかけた室内で扇風機を併用すれば、冷気が室内の下層に溜まるのを防いで対流を促すことができます。暑熱環境で働く人が休憩を取るための部屋では、室温を24〜26度に設定すると、効果的に体温を冷却することができます。室内と外気温の差は7度未満が望ましいとされています。

効果的な水分の摂り方 

熱中症を予防するためには、水分の摂り方が大事です。暑熱環境での多量の発汗時には、ナトリウム、カルシウムなどの電解質も同時に失います。発汗で損失した物質をなるべく早く補充することが必要です。

(1)どのような水がいいか?
通常の休憩時は水でもかまいませんが『藍色の風 第10号』でお知らせしたように、高温下や多量の発汗時は電解質を含んだ水の方が吸収は早く効果的です。具体的には0.2%(水1Lに対して2gの塩)の塩分を含んだ水か、市販のスポーツドリンクを水で半分に薄めたもの。飲み難い場合は0.2%の塩分に3〜6%(30g〜60gの砂糖)程度の糖分を加えてみましょう。

(2)熱中症予防の水分の摂り方は?
・ 15分〜30分ごとの休憩に水分をとる
・ 1回/200ml程度
・ 水温は5〜15℃が飲みやすいでしょう
暑い時期の活動や運動中に休憩を取ることは、疲労の蓄積を防ぐとともに水分補給のタイミングにも有効です。水分補給の原則は少量をこまめに摂ることです。

(3)お茶や炭酸でもいいか?
麦茶は大丈夫ですが、緑茶に含まれているカフェインには利尿作用があるので、熱中症予防の飲料には向いていません。炭酸飲料は同じ量の水分摂取に対し充足感が高いため、摂る量が不足し脱水になりやすい可能性があるので注意をしましょう。

熱中症は予防が大切です 

日ごろから十分な睡眠を心がけ、偏りのない食事をすることで基礎的な体力が維持されます。また適度な運動を続けることで、温度刺激を受けながら暑さに負けない体がつくられていきます。地球をいたわりつつ、私たちにできることから始めてみませんか?

エコ自慢 

夏になると私たちのクリニックでも、3年前から院長が窓辺にゴーヤを植えています。日差しが和らいで、緑の葉は目にとても優しく、元気がもらえます。今年も楽しみにしてくれている患者さんが多いようです。

参考文献 : 熱中症を防ごう 熱中症対策の基本(中央労働災害防止協会)

【看護師:立石・速水・竹内・長尾・阿部】