コラーゲンを飲めば肌は若返るか?

いつまでもつややかな肌でいたいというのは男女を問わず共通の願いなのでしょう。「コラーゲンって効くんえ?」と尋ねられることが時々あります。市販のコラーゲン飲料には「美容実感ドリンク」「おいしく飲んで、しっかりうるおう」「キレイの体感」などといった宣伝文句が踊っており、コラーゲンを飲めば美肌になると錯覚しそうです。コラーゲンを飲めば肌が若返るかどうか考えてみましょう。

コラーゲンは身体の中に最も多く存在するタンパク質です。そして皮膚の大部分を占める真皮はほとんどがコラーゲンから成り立っています。コラーゲンは肌のみずみずしや弾力性を保持する働きがあり、体内では皮膚の線維芽細胞、軟骨の軟骨細胞、骨の骨芽細胞でアミノ酸を原料にして作られています。

さて、皮膚の「しわ」は乾燥、老化、紫外線による光老化が原因とされています。紫外線を浴びると表皮や真皮のコラーゲン線維は変性してしまいます。また加齢によりコラーゲンは硬くなり、またコラーゲンそのものが減少します。こういったことがあいまって「しわ」をつくります。

「しわ」をできにくくし、皮膚の弾力性を保持するためにはコラーゲンをのめば皮膚のコラーゲンが増加して効果がありそうに思いますが、さてどうでしょうか?

コラーゲンは50個以上のアミノ酸が組み合わさってできていますが、コラーゲンを構成しているアミノ酸の中にはリシンとプロリンが含まれています。アミノ酸からコラーゲンになる過程で、リシンとプロリンはビタミンCによって水酸化され、ヒドロキシリシン、ヒドロキシプロリンに変化しています。

市販のコラーゲン飲料などにはコラーゲンが小さく分解されたコラーゲンペプチドが含まれています。このコラーゲンペプチドはヒドロキシリシン・ヒドロキシプロリンを含んでいますが、これらの水酸化されたアミノ酸を飲んでも、コラーゲン合成に必要な元のリシン・プロリンにはもどることが証明できないのです。リシン、プロリンからでなければコラーゲンは合成できません。したがってコラーゲンの分解産物を含むコラーゲン飲料をのんでも、それを材料として皮膚の繊維芽細胞がせっせと新しいコラーゲンを作り、弾力のある、みずみずしい皮膚を作ってくれることはありません。

それではコラーゲンを多くするにはどうすればよいのでしょう?「たんぱく質を含むいろいろな食べ物をバランスよくとること」です。結局は管理栄養士の藤原がいつもいっているところにたどり着きます。

さて、人はつややかな肌を求めると冒頭に書きましたが、顔の「しわ」というと私はマザーテレサの顔を連想します。非常に深いしわが顔中に刻まれていました。しわのない艶やかでみずみずしいマザーテレサより、現実のマザーテレサの方がよほど魅力があると思います。年相応に老いるのも悪くないと考えています。

【坂東】

参考資料:
コラーゲンの話 大崎 茂芳著(中公新書)  
国立健康・栄養研究所のホームページ
「食品成分有効性評価及び健康影響評価プロジェクト解説集」
日本経済新聞 平成22年1月24日