ピーマンはなぜ緑色?

夕食に出たチンジャオロースのピーマンを息子が残していました。「ピーマンはなんで緑色か、わかる?」私の問いかけに息子はキョトンとしていました。おもむろに次のように話しました。話しの内容を要約してみます。

地球ができて46億年といわれています。気の遠くなるような時間です。原始の地球には原始の大気と海とがあったと推測されています。太陽からの強い紫外線で原始の海の中にたくさんの有機物が合成され、約35億年前に我々の祖先である生物が発生していますが、強力な紫外線のためにたちまち消滅してしまったようです。それらの生物のなかで紫外線に抵抗できるものが突然変異で現れ、それが現存している100万種の生物に発展してきたと考えられています。

この強力な毒性をもつ紫外線は地球の表面にできたオゾン層により遮断されるようになりました。紫外線は酸素に働きかけて活性酸素を作り出し、その活性酸素が強い障害作用を有し、生物に影響を与えます。地球上の生物は、この紫外線による活性酸素発生に対して、どのように対処するかの方策を身につけなければ生存できなかったのです。

植物の色である緑色はクロロフィル、橙色はカロチノイド、黄色はフラボノイドなどの天然色素で、これらは活性酸素を消去する作用があり、スカベンジャーと呼ばれます。植物はこういったスカベンジャーを体内に合成することで、紫外線による影響から逃れることができるようになったのです。活性酸素はいわゆる悪玉コレステロールであるLDLを酸化して変性LDLにし、動脈硬化を進ませます。また老化や癌の発生にも活性酸素が関与していることがわかっています。こういった活性酸素の害を防ぐために、この色素類を我々が身体の中に食物として取り入れると、活性酸素の発生を防いだり、発生した活性酸素を弱体化させたり、活性酸素により障害された部位を修復したりすることができます。
野菜を食べるということは単にビタミンをとっている、便秘によいなどということに留まらず、今回管理栄養士の藤原も記載しているように、活性酸素に対するスカベンジャーを摂取することで、動脈硬化、発癌、老化などの予防などに役立っているのです。

私は美味な料理に対して「うまい」とは言いません。「おいしい」と言います。「食う」とも言いません。「食べる」「いただく」と言います。食材に含まれるこれらの作用を知ってしまうと、「うまい」「食う」という表現がいかに高慢なものであるかわかります。テレビなどで放送される大食い競争や早食い競争なども、その浅はかさ故、見ていられません。食事をするということは35億年、営々として培われてきた、生物の非常に巧妙な仕組みを私達が戴いているのです。
話しをし終えると、息子はペロリとピーマンを平らげました。

【坂東】

参考文献:続フリーラジカル入門 吉川敏一(先端医学社)

【原始の太陽と地球】 【ウッドデッキにある坂東の昼食用野菜】