降圧剤から離脱し、通院も中止できた23人

坂東ハートクリニックを開業して、今年の9月で丸6年になります。クリニックが行ってきた仕事を少しずつまとめていきたいという思いがあり、今年10月に埼玉県で開かれる第23回日本臨床内科医学会で、当クリニックにおける高血圧診療に関して発表することにしました。

この6年間に来院された方の中で最も多かった疾患は高血圧症でした。平成21年6月末までに来院された高血圧症の方は男性1363名 女性1500名。これらの方々がそのまま通院を継続されているのはなく、セカンドオピニオンを求めて1回だけ来院された方、通院が困難になり来院されなくなった方などを含んでいます。

ご存知のように、当クリニックでは高血圧治療の基本として、食事や運動を調整し、足らない部分を薬で補うこととしています。治療の基本となる家庭血圧の計測方法は看護師が説明しています。食事調整は管理栄養士が担当し、御自身の食生活を改善された方は多いことと思います。またインボディで体の各部位の筋肉量などの評価を受け、ウォーキングだけではなくスクワットやカーフレイジングなどの安全な筋肉トレーニングを看護師に教わった方もあるでしょう。

このような方針で治療を行い、心不全、左室肥大、CKD(慢性腎臓病)など高血圧症に伴う合併症がなく、降圧剤を次第に減量、中止し、無投薬で家庭血圧が120mmHg 台未満を達成した方が6月末までに23名ありました。「通院は不要です」と伝え、家庭血圧の計測は続け、高くなるようなら来院をと話しました。皆さん、ニコニコ顔で病院を後にされました。

23名の内、男性は3名、女性は20名で平均年齢は61±7.5歳、投薬中止に到るまでの体重減少は4.5±2.5Kgでした。投薬中止後一定の期間の後に再度の血圧上昇を来たし、服薬を再開したケースは女性では3名ありましたが、男性にはいませんでした。

代表的な方をお知らせします。Oさん、60代前半の男性です。健診で高血圧症、糖尿病を指摘され平成20年10月に来院されました。身長163cm体重68.1Kg BMIは25.6でした。血圧は162/100mmHg 、糖尿病の指標となるHbA1cは7.7%ありました。頭痛を伴う高血圧のため当初から降圧剤を使用しましたが、それ以外はクリニックの方法で治療を行いました。8ヶ月後の今年6月には体重が62.0Kg(−6.1Kg)BMI 23.3になりました。薬を減量、中止しても、家庭血圧は100−110mmHgで維持され 、HbA1cは6.0%のままでした。通院は一旦中止し、家庭血圧の計測方法は続けながら、3ヶ月後に糖尿病も含めて確認することとしました。

私は薬を毛嫌いしているのではありません。薬は非常に効果的であり、病気の治療には欠かせません。しかし自分が病気になったとしたら薬は必要最小限にしたいと思いますし、可能なら薬を使用しなくてもよい状態にもっていきたいと考えます。薬を使用しなければ薬代も、また病院での診療代もかかりません。お金だけではなく、通院に要する時間も他のことに振り向けることができ、人生を有意義に過ごせます。

あと2〜3Kg、体重を落とせば、薬を中止できる方がたくさんおられます。また 薬の中止までは無理としても、薬を減らせる方も数多くおいでます。「食事と運動の調整という基本を守り、足らない部分を薬で」という方法を強くお勧めします。

因みにこの文章を書いている8月下旬には降圧剤をストップし、来院中止とした方が30名に達しました。

 【坂東】