耳鳴りの色々

耳鳴りで「イライラする」「睡眠が十分とれない」・・といった声を耳にします。耳の中で、聞こえるはずのない音が聞こえてくるのは実につらいものですね。ひと口に耳鳴りと言っても、色々な種類があります。キーン・ジーン・ゴー・シーン・ミンミンなど全てを合わせると20種類以上もあります。また聞こえ方も、片方だけの場合もあれば、両方の場合もあります。音も音源も人により様々です。ここで、一般的な耳鳴りの種類についてお話したいと思います。

■ 耳鳴りの種類

●自覚的な耳鳴り
本人にしか聞こえない耳鳴りで、多くの耳鳴りがこの場合です。音は、「ジージー」とか「キーン」など、人により色々な音があり、またいくつかの音が同時に鳴っている場合もあります。音は外耳⇒中耳⇒内耳を経て聴神経によって脳へ伝えられます。これらの経路のどこかに異常(病気)がある場合に耳鳴りを伴うことがあります。この自覚的な耳鳴りの多くは内耳や聴神経などの異常が考えられています。

●他覚的な耳鳴り
耳の周りの筋肉や関節の音、血管の血流の音などが本人はもとより、聴診器などを当てると、第三者にも聞こえる耳鳴りです。音は、「ザーザー」とか「ドクンドクン」といったように脈・心拍に一致した血流音のようなものがほとんどで「血管性耳鳴」「筋肉性耳鳴」と言われます。この他覚的な耳鳴りは、内耳動脈などの動脈硬化や高血圧、耳周囲の血管の異常、顎関節症や顎筋肉の結節や脹れ(あごのしこり)などが原因としてあげられます。

●生理的な耳鳴り
周囲が静かな夜や防音室などで「シーン」という音が聞こえる時がありますが、これは生理的なもので心配ありません。

●病的な耳鳴り
耳鳴りと同時に難聴やめまい、吐き気や頭痛を伴う事があります。このような場合は速やかに病院を受診しましょう。

●耳鳴りとは違う⇒頭鳴
耳ではなく、頭の中で耳障りな音を感じる場合があります。そのような症状を「頭鳴」と言います。頭鳴を感じるのは、両方の耳に耳鳴りが起こっている場合です。2つのスピーカーからの音が真ん中辺りで1つになるように、両方の耳で音が発生し、その音が頭の中にまで反響しているのです。反響している分、耳鳴りを大きく感じることもあります。通常検査で異常を認めることはほとんどないのですが、頭鳴の中には、耳鳴りではなく、脳の障害(脳の血管異常)によって起こるものがあるので注意が必要です。これは、心臓の拍動に合わせて「ザーッザーッ」とか「ビューンビューン」とかの音がしますが、頭の表面から聴診器を当てると血管の雑音がするので容易に区別できます。

以上より、耳鳴りの種類・原因には様々なものが考えられ、つきとめる事により、改善法や治療法もみえてきますが、完全に耳鳴りをとることは難しいのが現状のようです。耳鳴りばかりに注意がいくとストレスを感じ、さらに耳鳴りを悪化させ悪循環に陥ります。耳鳴りを憎悪させないような生活面での気配り、十分な睡眠・バランスのとれた食事などが必要です。高血圧、糖尿病、動脈硬化などの慢性の病気があると耳鳴りを悪化させるので、十分にコントロールしておくことも大切です。喫煙者において禁煙は必須です。不快な耳鳴りですが、少しでも症状が和らぎ、日常生活に支障のないよう上手にお付き合いできればと思います。

【臨床検査技師:田中・宮原】