「ちょい太」「ちょいメタ」でいいか?

「ちょい太、ちょいメタでも大丈夫」といったフレーズを聞くことがあります。その根拠として日本人は戦後、体重が増加することで死亡率が低下し、平均寿命が長くなったこと、BMI[Body Mass Index 体重(Kg)÷身長(m)÷身長(m)]という指標で死亡率を比較すると、男女ともBMIが25.0〜26.9がもっとも死亡率が低かったという統計調査等が挙げられています。前者の理由は戦後の栄養状態が改善し、免疫力が向上していろいろな感染症に罹りにくくなったこと等を意味し、肥満を容認するものではないと思います。また後者の調査は7年間という短期間の観察であり、その根拠を身長が178cmの私に当てはめて見ると、最も死亡率が低いとされる私の体重は79Kg 〜85Kg になります。私にとっては「未踏の体重」であり、かなり重い感じがします。この体重にしてしまうと膝痛や腰痛が必発するでしょう。何も病気がないのであれば、すこし太めでも短期間では問題は生じないかもしれません。しかし高血圧や糖尿病がある人で、「ちょい太、ちょいメタ」を放置したときのデメリットは明らかです。

「ちょい太、ちょいメタでも大丈夫」といった主張で問題となるのは、判断の根拠を死亡率においている点です。その人がもっている病気や健康寿命を考慮していません。日常生活を大きく損なう病気や怪我の期間を、平均寿命から差し引いたものを健康寿命と呼んでいます。世界保健機構(WHO)から発表された2004年の統計では日本人の平均寿命は男性78.4歳、女性85.2歳ですが、健康寿命は男性72.3歳、女性77.7歳でした。高齢になり、日常生活が損なわれて過ごす期間が男性の場合に6.1年 女性では7.5年にも達することがわかります。単に寿命を延ばすだけではなく、元気に過ごすためには健康寿命を長くする工夫が必要です。

それでは要支援や要介護の人も含めて、実際に手助けや見守りを必要とする人は日本にどのくらいいるのでしょうか?平成19年の国民生活基礎調査によると「手助けや見守りを要する人」は523万2千人(男性210万8千人、女性312万3千人)で、そのうち65歳以上の人は395万5千人(男140万3千人、女254万2千人)にも上ります。平成21年3月末の四国の人口が406万人ですので、ほぼ四国の全人口に匹敵する65歳以上の人が要介護・要支援を含めた手助けや見守りが必要になっていることになります。このことに要する費用も半端ではないことがわかります。

さて、介護が必要になった原因でもっとも多い疾患は脳卒中です。続いて認知症、高齢による衰弱、関節疾患、骨折・転倒と続きます。脳卒中、認知症の予防は今回触れませんが、関節疾患、骨折・転倒の原因の一つが肥満であることは判っています。代表的な関節疾患である膝、腰の変形性関節症は前述のBMIが高い人ほど起こりやすくなっています。

特別な問題がなければ、心臓や血管を100歳前後まで保持する技術はすでにあります。しかし骨や関節といった運動器を一世紀の間、日常生活に支障の無いよう、医学的に維持するのはかなり難しいのが現状です。若い時から運動器への配慮やメインテナンスの工夫が必要です。

健康寿命を長くするための方策として、骨や関節に過剰な負担をかけぬよう、体重の調整をしなければなりません。どのくらいの体重が現在の自分の体調や病気にとって適切か、また将来の骨・関節疾患を避けるためにはどう体重管理をすべきか、といった視点をお持ち下さい。『藍色の風 第23号』でお知らせしたロコモーティブシンドロームへの対策が必要です。   

【坂東】