〜ゆとろぎ〜ゆとろぎ〜ゆとろぎ〜ゆとろぎ〜ゆとろぎ〜

以前から気になっていたイスラムについて、お盆休みに少し本を読む機会がありました。片倉もとこさんが書かれた『ゆとろぎ』と『イスラームの日常世界』の2冊を手にしました。

仏教とキリスト教に関してはこれまでもたくさんの書籍を読みましたが、イスラムに関するものは初めてでした。なんとなく、うさんくさそうに考えていたイスラム社会に対して、自分の無知さ加減を思い知らされました。

性善説や性悪説は皆さんもご存知のことと思います。孟子は人の本性には生まれつき仁・義が備わっていると性善説を主張しましたが、荀子は人間の本性は悪であると性悪説を唱えました。私は人に関して対極的な、この二説しか知りませんでしたが、イスラムでは『性弱説』という考えが基礎にあります。人は本来、善でも悪でもなく、弱い存在であるため、誘惑に負けないような状況を作るべきであると考え、いろいろな制度を作っています。

不特定多数の男女が肌を見せて生活していると、誘惑に弱い人間の事、乱れるに決まっているので男女とも、手首、足首までの長い衣服をつけることにする。性的な誘惑に対しては、男性は特に弱いので女性は髪の毛を覆うベールをつけて弱い男性を惑わさないように協力する。なるほどそういうことかと気づきました。また、イスラム社会には、我が国や西洋の愛人などとは異なる正式な一夫多妻制があります。これは対十字軍と以外にもたくさんの戦争を経験し、そのために発生した多数の未亡人とその子供を救うために作られた制度とのことでした。テレビでこの一夫多妻制をおもしろおかしく伝えるバラエティ番組がありましたが、自らの無知を棚に上げて他国の制度や風習を嗤う、浅はかな同胞に恥ずかしい思いがしました。


【ラーハの世界】

イスラム社会の特徴を表す言葉にアラビア語の「ラーハ」と呼ばれる概念があります。これは日常生活の中になにげなく存在する「ゆとり」や「くつろぎ」を言います。日本では仕事の後にご褒美のように与えられるのが「ゆとり」や「くつろぎ」ですが、イスラム社会では何よりも先にこの「ラーハ」つまり「ゆとり」や「くつろぎ」を大事にします。片倉さんはこの「ゆとり」と「くつろぎ」から「りくつ」を引いて「ゆとろぎ」という単語を作り、日本人にイスラム社会の生き方を示すシンボル的な言葉として提示しています。「いけいけ、どんどん」の世界から「ゆうっくり、しずかあーに」生きてはどうかということです。

世界で10億人以上のムスリムが存在しています。相互理解のために、欧米のみではなく、イスラム社会にも関心をもって行こうと思っています。

【坂東】