徳島大学医学部 循環器内科教授 佐田 政隆先生


【左:坂東 右:佐田政隆先生】

長い間、徳島大学医学部には循環器専門の内科教授が不在で、大学の循環器部門が少し手薄になっていました。そのような状態を改善するために、今年4月に徳島大学医学部循環器内科教授として東京大学医学部から佐田政隆先生が赴任されています。

循環器部門といっても分野が広いため、佐田先生がどのような仕事をされるのか、私自身も大変興味がありました。6月に佐田先生をお招きして医師仲間の勉強会を開き、徳島に赴任されてどのような仕事をしようとされているのか、抱負を伺いました。

佐田先生は狭心症・心筋梗塞症といった虚血性心疾患を仕事の対象とされてきました。虚血性心疾患の治療では心臓の血管の狭いところや詰まったところを広げたり、ステントと呼ばれる網目状の小さな金属リングを病変部に入れたりするカテーテル治療が主になります。カテーテル治療ですべて上手くいけばよいのですが、広げたりステントを入れたところが一定の確率で再び狭くなってくるのが問題でした。

いったん広げたところがどうしてまた狭くなってくるのか、世界中の循環器専門医がその謎を解こうとしていました。その仕組みに一応の仮説は示され、それが信じられていたのですが、佐田先生はその仮説では説明できない事実があることに気づき、広げたところが狭くなるその真の仕組みを解明しようとして研究を続けました。そして、それまで常識とされていた仮説を覆す新しい発見をし、米国の学会で高い評価を受けています。その内容が『Nature Medicine』という雑誌にも掲載され、世界的に大いに注目されました。私もその研究過程の話しを聞き、着眼力の鋭さと、非常に細かい綿密な仕事に驚きました。

人の資質には本質的に大きな差はないと思うのですが、やろうとしたこと、やらなければならないことをどれだけきちんとやり通せるかで、差ができてくるように思います。そういった意味でも、佐田先生は非常に我慢強く、真実を追いかける能力があると感じました。

循環器内科医を目指そうとしたのも、ショック状態を伴う重症心筋梗塞の患者さんの主治医になったことがきっかけだったそうです。1週間、病院に泊まり込み、ありとあらゆる手段を講じてその患者さんを救命できたのですが、病気の急性期治療方法をどうするかによって患者さんの予後が大きく異なることに自らのやりがいを見いだし、循環器診療に魅力を感じた由です。また新発見となった研究も、研究のための研究ではなく、臨床上の問題を解決するための研究であったことがすばらしいと思います。目の前にいる患者さんをどうにかして救いたいと考える気持ちと、それを達成しようとする強固な意志を併せ持つ、頼もしい医師と見受けました。

このような医師が徳島大学循環器部門の教授として循環器諸分野を統率されれば、今後大いに発展するであろうことは容易に想像できます。対象とする疾患も、虚血性心疾患に限らず、循環器部門の疾患であれば何にでも、いつでも対応したいと意思表示をされています。

徳島大学医学部循環器部門の今後の仕事ぶりに、大いに注目していこうと思っています。     

【坂東】

追記:佐田先生は熊本出身で、趣味は柔道です。医学部学生の時に、東日本医学部学生体育大会である東医体で、柔道個人戦の優勝を遂げています。どうすれば柔道が強くなるか、学生のときにもいろいろと工夫をして練習したそうです。こんな所にも先生の特徴が垣間見られます。