家庭で血圧を測定しましょう

秋晴れの続くさわやかな季節になりました。過ごしやすい季節とは反対に、気温が下がってくると血圧は上昇してきます。夏場は血圧が安定して薬を減らせていても、寒さで服装が半袖から長袖になる「衣替え」のように、血圧の薬も季節によって服用量の調整が必要です。適切な時期に適量の薬を服用するためにも、家庭血圧を測定しましょう。

「血圧は病院で測るもの」とは一昔前の話です。血圧は気温や塩分摂取量、睡眠不足、ストレスや疲れなどの外部環境によって変動します。家庭で血圧を測定していると、どのようなときに血圧が変動するかわかるようになり、事前に対処できるようになります。また、白衣高血圧といって、病院ではかる血圧は高いのに、自宅では低い方がいます。その場合、病院で測定した血圧値をもとに血圧を下げる薬を使用すれば、血圧が下がり過ぎる可能性があります。逆に仮面高血圧といって、自宅では血圧が高いのに病院に来ると正常値になっている方もいます。家庭血圧を測定する事で自分はどのタイプなのか診断に役立ちます。

また、脳卒中や心筋梗塞など血管系のトラブルは、早朝の時間帯に起こりやすいとされています。家庭血圧では起床時の血圧が測定でき、病院で測った血圧だけを参考にするよりも、将来脳卒中や心筋梗塞の発症を予防するのに有用であるという、疫学的研究も報告されています。

このように同じ条件下で長期間にわたり測定される家庭血圧は、再現性に優れ、適切な診断により合併症の予防や薬剤使用量の減少につながり、年間約1兆円の医療費削減になると言われています。

血圧計の選び方

上腕(二の腕)で測定する血圧計を選びましょう。手首で測定する血圧計は簡単で便利ですが、説明書には「心臓の高さに合わせる」とあります。この場合「心臓の高さ」=「右心房の高さ」を示します。しかし、一般に右心房の位置はわかりにくく、値に誤差が生じやすくなるので上腕式血圧計の使用をお勧めします。

腕帯の種類(図1)は柔らかい軟性腕帯と硬く丸い形の硬性腕帯があります。標準的な腕の太さの方は硬性腕帯で測定しやすいですが、腕が太い方はこの硬性腕帯が腕にフィットせず、正確に測定できない場合があります。軟性腕帯で測定するか、サイズが合わない場合は自動血圧計のメーカーで別売購入できます。

自動血圧計は年1回程度の精度確認が必要です。家庭で使用している血圧計をクリニックにお持ち下さい。水銀血圧計と比べて精度確認します。

家庭血圧測定方法

:起床後1時間以内(排尿後に)        
座って1−2分安静後、服薬前、朝食前に計測
高くても低くても測り直しはしない(予想した血圧と異  
なった場合に、悪い値は記録したくないという心理が働 
き、本当の値を記録しないことがあるから)

:就寝前
座って1−2分安静後
高くても低くても測り直しはしない

  • 腕帯の位置は心臓の高さに、素肌か薄いシャツの上に巻く。腕は筋肉の緊張をとくため机の上に置く。必要なら小枕を肘の下に敷く。
  • 室温に注意し、冬場は暖房をする。
  • 測定中に会話はしない。(血圧が上がってしまう)
  • 測定前に喫煙、飲酒、カフェインの摂取は行わない。

朝・夜以外にも具合が悪いときに測定し、どのような自覚症状があったか併せて記録しましょう。可能なら勤務時間帯血圧も測定してみましょう。仕事中のストレスで、極端に血圧が上昇している方がいます。

測定した血圧は必ず記録しましょう

測定した血圧は脈拍数も一緒に必ず記録しましょう。診察時には記録したデータをお持ち下さい。

あなたの血圧の目標値は?

表1 血圧の目標値(mmHg)

  診察室血圧 家庭血圧
若年者・中年者 130/85未満 125/80未満
高齢者 140/90未満 135/85未満
糖尿病患者
慢性腎臓病患者
心筋梗塞後患者
130/80未満 125/75未満
脳血管障害患者 140/90未満 135/85未満

* 日本高血圧学会「高血圧治療ガイドライン2009」より抜粋
参考文献:日本高血圧学会「日本高血圧学会ガイドライン2009」「家庭血圧測定の指針第2版」

【看護師:竹内・長尾・速水・立石・阿部】