健康保険を上手に使おう

病気の経過を見るとき、どのくらいの間隔で採血検査をすればよいでしょうか?

血液の固まりやすさを調整するワーファリンを服用している場合には、患者さんの状態によって1週間〜2ヶ月間隔で血液検査を行っています。糖尿病の方や腎機能が極端に低下してきた方の場合には1ヶ月に1回の割合で採血検査を行っています。高齢の方やたくさんの病気をもっている方の場合には、病状が比較的安定していても、半年に1回程度で採血検査を行うことがあります。薬でコレステロールの調整を行っている時は、病状が安定していれば血液中のコレステロールレベルはほぼ同じ状態で推移するため、体調に変化があった時や他の合併症が発生したときなどを除けば、1年に1回程度の採血でよいと考えています。

このような方針で血液検査を行っていますが、先日、毎月採血検査をしてコレステロールレベルを調べてほしいと希望される方がありました。それは医学的にも適切ではないばかりか、健康保険制度をも崩壊させるため、検査はできないとご返事しました。

今年の4月から、以前は政府管掌健康保険と呼んでいた「協会けんぽ」の健康保険料率が改定されました。厚生年金を受け取る方が加入している健康保険です。この健康保険料は標準報酬月額(毎年4月〜6月の給与に、通勤手当、超過勤務手当てなどの諸手当を合算して平均した額)にその年の保険料率をかけて計算されますが、徳島県の保険料率は前回の8.24%から9.39%へと大幅に上昇しています。この保険料は労使で折半して支払いますが、個々人ではかなりの増額になっているはずです。ご自分の給与明細をごらん下さい。この9.39%という率は9.42%で全国第一位の北海道から数えて、4番目に高い率です。保険料率は各都道府県で要した医療費を基礎に算定されるため、徳島県では医療に要する費用が多くなっていることがわかります。

また75歳以上の方が属する後期高齢者被保険者の年間健康保険料をみてみますと、2010年度では全国平均で63,300円になっています。前年度比2.1%の増加です。後期高齢者のうち、徳島県での平均的な厚生年金受給者(年金収入201万円)の年額健康保険料は、昨年度の50,400円から54,400円と4,000円の増額になっています。これは全国でもっとも引き上げ額が高くなっています。

高齢化が進むため、政府からの国庫補助が増加しない限り、健康保険料が自然増加するのは止むを得ないことでしょう。しかし工夫をしてその上昇を防ぐことが必要です。ご存知の通り、健康保険の原資は国民が毎月一定の金額を出し、病気になったとき困らないよう、プールしたものです。健康保険の組織が大きくなり、組合員同士の顔が見えなくなると、この相互扶助の関係が見えにくくなってしまいます。向こう三軒両隣で健康保険組合を結成すれば、もっと上手にまた慎重に保険制度を使うことでしょう。健康保険は「お互い様」の精神を基本にしており、健康保険の財政基盤を破綻させないよう、上手に使わなければならなりません。

以前からお伝えしていますが、検診や他院での血検査結果は保存し、受診時にご持参ください。電子カルテに記入し、病状評価に利用します。当クリニックでの採血検査は前述のように、病状に応じて一定の間隔で行っていますが、それ以外に皆さんから採血検査の希望があった場合、医学的にその適否を判断して検査を行うかどうか、お伝えします。

限られた健康保険の原資を互いに上手に利用し、健康保険料がうなぎのぼりに高くならないよう、工夫しましょう。

 【坂東】