血圧計の不思議? 発見!

当クリニックでは診察前に私たち看護師が皆さんを看護室にお呼びして、お話を伺ったり血圧を測ったりしていますよね。水銀血圧計で血圧を測定していますが、その時に『どうしてそれで血圧がわかるんで〜?』との質問をよく受けます。見ていると確かに不思議ですよね。そこで今回はその水銀血圧計や、皆さんが家庭で使っている自動血圧計のしくみについてお話ししようと思います。

血圧計の歴史

1628年にイギリスの医師ウィリアム・ハーヴェイが、血液が循環していることを発見しました。それから100年後の1733年にイギリスのステファン・ハーレスが馬の頸動脈にガラス管を挿入して血圧の測定を試みました。このように当時の血圧測定は大変難しいものでした。100年以上経った1896年にイタリアの病理学者リヴァ・ロッチが上腕にカフ(腕帯)を巻きつけて橈骨動脈(手首にある動脈)の触診によって血圧を測る方法を発明し、さらに1905年にロシアの外科医コロトコフが上腕動脈(肘の部位にある動脈)で特殊な音(コロトコフ音)が聞こえることを発見して聴診法による血圧測定法を編み出しました。1930年代になってその有用性が認められて世界に広まり、今では多様な血圧計が開発されて家庭にも普及しています。

水銀血圧計のしくみ

上腕に腕帯を巻いて圧迫すると、上腕動脈は遮断されてしまいます。次にゴム球のネジをゆるめて少しずつ空気を抜いて圧迫を解いていくと、ある時点から血液が流れ始めます。この際、狭い血管を最初に血液が通る時に音が発生し、この音は血管の圧迫が解けて元の太さに戻るまで続きます。この音を「コロトコフ音」と呼び、血流の渦巻きや血管壁の振動などによって発生するとされています。コロトコフ音は音の大きさや音色によって五相に分けられ、音が聞こえ始めた点を最高血圧(収縮期血圧)、音が消えた点を最低血圧(拡張期血圧)としています。

自動血圧計

家庭で使用されている自動血圧計のほとんどがオシロメトリック法を利用した血圧計です。オシロメトリック法は上腕に腕帯を巻いて動脈を圧迫したときに、動脈の拍動により微小な振動が発生することを利用して測定します。測定を始めると、巻いた腕帯が加圧され、その後、圧が少しずつ下がっていくと、振動の振れ幅が急に大きくなります。その振れ幅の増加が最も顕著な点を最高血圧としています。さらに圧を下げていくと今度は、振れ幅が急激に減少していき、振れ幅の減少が最も顕著な点を最低血圧としています。自動血圧計の最高血圧と最低血圧の判定には聴診法で測定した時の値と一致するよう解析プログラムが取り込まれています。そのため、血圧値は聴診法で測定した数値と比較的一致したものになっています。しかし、心房細動などの不整脈があり、脈と脈の間隔がふぞろいになっている場合は正しく測定できないこともあります。また、長期間の使用によって腕帯が傷んだり、数値に誤差が生じたりすることがありますので、半年〜1年に1回の点検をお勧めしています。受診の際に確認致しますのでいつでもお持ち下さい。

病院で測定した血圧値も家庭にある自動血圧計で測定した血圧値も、どちらも的確な診療を受ける上で大切なデータとなります。その大切なデータ作りのために血圧計の仕組みを知り、家庭血圧はルールにそった測定をお勧めしています。血圧測定についてお分かりにくい点がある方はいつでもお声をおかけ下さい。

◇◇ひとくちメモ 『血圧の 上の血圧、下の血圧って なに?』 

例えばゴムボールを指で押したり放したりすると、中の圧はそれに応じて連続して上昇したり下降したりします。血管の内圧も心臓が収縮するとき、拡張するときで変動し、心臓が「ギュっ」と縮むと左心室から血液が全身に送り出され、流れ込んだ血液によって血管は押し広げられ、血管に対する圧力は高くなります。このときの圧がいわゆる上の血圧のことで「最高血圧」または心臓が収縮した時の血圧ですから「収縮期血圧」といいます。その後に心臓が拡張して血液が血管内へ送り出されていないときの低い動脈内圧を「最低血圧」または心臓が拡張した時の血圧ですから「拡張期血圧」といい「下の血圧」とも呼ばれています。

【看護師:速水・立石・竹内・長尾・阿部】

引用文献:高血圧の治療と看護(南江堂) 自分で測る血圧Q&A(中央法規)
動脈血管硬化指標としてのASI測定原理と基礎的な評価(杏林大学保健学部生理学 嶋津秀昭)