「太っ腹」は、なぜ危ないか?

男性の太っ腹は頼りがいがあり、女性の太っ腹は「肝っ玉母さん」のようで、いずれももてはやされた時期もあります。しかし動脈硬化を考えると男女とも「太っ腹」は危険です。出っ張ったおなかがなぜ危ないのかお伝えします。

太ったおなかの正体は腸管周囲への脂肪沈着です。腹部の手術でおなかをあけると、一番手前には大網というエプロンのような構造をした、厚手の網状組織があります。太った人の大網は網目に脂肪がたくさん沈着していて、ずっしり重く感じます。その大網をエプロンの裾を持ち上げるようにめくり上げると、小腸や大腸が見えてきます。小腸は長さが6〜7メートルもありますが、おなかの中でねじれたりしないように腸間膜という膜様の組織で固定されています。

腸間膜の構造は一般の人にはわかりにくいので、扇にたとえて説明します。扇を広げたとき、扇の半円形の外縁に腸管がくっついていると仮定して下さい。紙を貼ってある部分が腸間膜にあたります。太鼓腹の人はこの腸間膜に脂肪が厚くずっしりと付いています。太った人の手術時に腸間膜をさわると、そのネバネバ感がわかります。

脂肪組織を拡大してみると写真のようになります。写真1は普通体型の人の脂肪細胞、写真2は太った人のものです。太った人では脂肪細胞が大きくなり、小型の未熟な脂肪細動が増えていることがわかります。私が医学部学生のときには、脂肪細胞の役割はエネルギーを蓄えること、と教わりました。飢餓状態になったときにこの脂肪細胞が遊離脂肪酸を血液中に放出し、エネルギーになります。しかし最近、脂肪細胞の他の役割がわかってきました。脂肪細胞がいろいろな化学物質を分泌するというのです。その物質を総称してアディポサイトカインといいます。そのなかで、作用が解明されてきたいくつかの物質を説明します。

■アディポネクチン:血管内膜の動脈硬化促進を抑え、インスリンの効果を高める作用があります。アディポネクチンは脂肪細胞が大きくなると、その産生量は減少してしまいます。脂肪細胞を適度な大きさにしておかないと、大事な物質が出なくなるわけです。おなかがでて、脂肪細胞が大きくなると、アディポネクチンが少なくなり、動脈硬化が進みます。糖尿病があって、太っ腹の人はアディポネクチンが少なくなるため、自分が分泌しているインスリンの効き目が悪くなり、糖尿病が悪化します。

■TNF-α:インスリンの効果を悪くする作用がありますが、脂肪細動が大きくなるとこのTNF-αがたくさんでてきてしまいます。糖尿病が悪化します。

■PAI-1:血液中にできた血のかたまりを溶かす作用があります。しかし脂肪細胞が大きくなるとこの物質も少なくなり、血管の中にできた血のかたまりを溶けにくくします。不安定狭心症や急性心筋梗塞症などは冠状動脈内膜の障害を契機にして血のかたまりができ、発症します。そのようなとき、PAI-1が少なくなっていると、小さな血のかたまりを溶かすことができず、血管を閉塞させるように仕向けてしまいます。

こういったアディボサイトカインは腕や足の皮下脂肪に比べて、腹部内脂肪から活発に分泌されることがわかっています。したがって、おなかにたくさんの脂肪をためている人はアディポサイトカインのうちの大事なものを少なくし、危険なものを多くしていることになります。動脈硬化を進展させ、糖尿病を悪くさせてしまいます。

私は診察の時に、腹部の脂肪状態も手で触って確認しています。おなかの周りに脂肪がついてくるとよくわかります。腹部の脂肪は付きやすいのですが、食事を調整し、歩行を中心とする運動をきちんとすると消失しやすいこともわかっています。   

病気の治療に薬を使うだけでなく、生活の調整をされ、「太っ腹」の脂肪組織を少なくするようお勧めします。

【坂東】

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ピッチャーが帰ってきた!  近藤内科病院消化器センター訪問記

「コントロール悪いなあ〜 ちゃーんとストライク投げてこい!」私は医学部の学生時代、野球部に入っていました。捕手をしていたとき、「自分はピッチャーをやりたい。」といって一人の新入生が入部してきました。ボールを投げさせてみると確かに速いのです。スタミナも馬力も十分ありましたが、コントロールがもう一つであり、捕球が大変だったことを覚えています。

そのピッチャーが近藤内科病院消化器病センター長となって徳島に帰ってきました。彼が千葉県の亀田総合病院という非常に有名な病院で内視鏡の副部長になり、活躍していたことは風の便りで知っていました。その彼が帰ってきたのであれば、ぜひ彼に内視鏡検査を依頼しようと考えて、当クリニックの方々を紹介してきました。検査を受けた方の感想は予想通りで、「これまで受けた検査に比べてとても楽だった。」というものでした。

27年ぶりのピッチャーに再会するため、4月のある日、近藤内科病院消化器病センターを訪ねました。同センターは近藤内科病院本院と同じように白色を基調にした清楚な建物で、エレベーターで2階に上がると、学生時代より少し体重の増した懐かしいピッチャーが迎えてくれました。センター長の斎藤圭治先生です。

月曜日から木曜日までは近藤内科病院で内視鏡の仕事を行いながらも、週末には亀田総合病院で内視鏡の仕事を続けるというハードな生活を続けています。

近況を尋ねるのもそこそこに、早速大腸内視鏡検査を見学しました。その日はポリープ切除術が予定されていましたが、内視鏡を挿入し、ポリープを発見し、切除して内視鏡を抜去するまでに要した時間は7分少々でした。患者さんの表情も観察していましたが、苦痛に顔をゆがめるということはまったくありません。大腸内視鏡検査というと、何となく恥ずかしい思いのする検査ですが、羞恥心をうまくコントロールするような下着の工夫もされており、感心しました。また内視鏡専属看護師もてきぱきと仕事をこなし、良いチームが形成されていることがわかりました。これならば自分も受けてみようと思ったくらいです。

通常の大腸内視鏡検査でも平均の所要時間は6〜7分ということでした。大腸内視鏡検査に対する私のイメージは「苦しむ患者さんをなだめすかしながら、あと少し、あと少しだから我慢して‥」と言うものでしたが、その想像は完全に払拭されました。

胃の内視鏡検査も、鎮静剤を使用して施行することが多く、そうすることによって「オエッ」という不愉快な嘔吐反射を押さえることができ、患者さんの負担が非常に少なくなる由です。胃内視鏡・大腸内視鏡検査をご希望の方は紹介致します。いつでもお申し出下さい。

【坂東】

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糖尿病の恐ろしさは合併症にあります

糖尿病の初期には自覚症状がほとんどあらわれないため、治療せずに放置している人が少なくありません。「治療をしない」というより「糖尿病であることをしらない」といったほうが良いかもしれません。「症状が出ないから悪くなっていない」ということではなく、そのまま放置していると、全身に合併症が進行してしまいます。

代表的な合併症とは?
■ 糖尿病網膜症 
網膜は眼の奥にあり、レンズを通して入ってきた画像をうけとる役割をし、カメラにたとえるとフイルムに相当します。網膜は常に正確な画像を受け取るため酸素や栄養素を運ぶ細い血管が網目のように、はり巡らされています。高血糖が続くと細い血管が詰まりやすく、こぶができたり、出血したりします。さらに進行すると傷んだ血管の機能を補うため「新生血管」という血管が現れてきます。新生血管は非常にもろく破れやすいため出血を繰り返し、視力低下や失明に至ることもあります。血糖コントロールを良好に保ち、自覚症状がなくても定期的に眼科受診をしましょう。

■糖尿病性腎症 
腎臓は体内の不要なものや毒になるような血液中の老廃物を尿として体外に排出しています。必要なものは血液中に再吸収するという重要な働き(ろ過)もしています。ろ過機能を受け持っているのが糸球体というところです。糸球体の細い血管が高血糖により損傷を受けると老廃物をろ過する機能が低下し、不要物や毒になるものが体内に残ってしまいます。逆に体に必要なたんぱく質が尿中に捨てられてしまいます。腎症の初期には尿たんぱくが出てきます。進行すると腎不全となり、さらに進行すると血液透析が必要になってきます。悪化さないために血糖や血圧のコントロールが重要です。

■糖尿病性神経障害 
高血糖状態が続くと末梢神経に様々な神経障害が現れてきます。糖尿病による神経障害は左右両側の足の先端から始まるのが特徴です。症状は「足のしびれ、冷感、痛み、薄い靴下を履いているような感じ」などです。糖尿病の初期には自覚症状が現れにくいのですが、神経障害は比較的初期に現れてきます。

また、自律神経障害により発汗異常(暑くないのに汗をかく、上半身だけあせをかくなど)起立性低血圧(立ち上がった時に血圧が下がってフラッとなる)胃排泄遅延(いつまでも胃の中に食べ物がある)下痢と便秘の繰り返し、勃起障害(ED)など症状が現れます。
神経障害で注意しなくてはならないのが神経線維の損傷です。これが進むと痛みやしびれを感じにくくなります。靴ずれや小さなやけど、小さい傷で痛みを感じにくいため、気づかず放置してしまうことがあります。こういったことが原因で壊疽(えそ)になり、悪化すると足の切断を要する場合があります。また、爪の変形、深爪や水虫など、皮膚に傷をつくりやすい状況は日常的にあります。早期に発見するために自分の素足を観察してみましょう。

■大血管障害 
高血糖状態が長期にわたり続くことで、細い血管だけでなく、太い血管も傷んできます。その典型的なケースが動脈硬化です。動脈硬化は老化現象の一つで健康な人にもありますが、糖尿病がある場合には10年以上も早く動脈硬化が進むと言われます。動脈硬化の代表的な病気は心臓なら狭心症・心筋梗塞、脳なら脳梗塞です。その他の生活習慣病(高血圧、高脂血症・肥満・喫煙)が重なると危険率も増します。食事や運動などの生活習慣を見直しましょう。

■糖尿病になりやすい人とは?
境界型糖尿病といわれたことがある人、肥満(BMI:体重(kg)÷身長(m)÷身長(m)が25以上)、血縁関係に糖尿病の方がいる人、運動不足の人、妊娠糖尿病、巨大児出産経験のある人、40歳以上の人は糖尿病になりやすいので早期発見・早期治療のため検査を受けましょう。             

【看護師:竹内・速水・立石・長尾】

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糖尿病と食事

「糖尿病になったら食べたらいかんもん、いっぱいあるんだろ?」と思ってらっしゃる方は多いですね。実は、そんなことはありません。糖尿病になっても、食べたらいけない食品なんて何一つありません。すべて食べる量とタイミングの問題です。
血糖値をうまくコントロールできると糖尿病の合併症は予防できます。そこで血糖値、HbA1cと食事の関係を説明しましょう。

■食べ物を体に入れると血糖値は誰でも上昇します。

■上昇した血糖値は時間がたつと下がります。(通常、血糖値は正常範囲内にコントロールできるしくみになっています。しかし、糖尿病の方はその働きが弱まっているので、血糖値が上昇しすぎたり、また下がりが悪くなったりしています。)

■食後1〜2時間をピークに上昇します。(糖尿病の場合、食後2時間値血糖は140mg/dL未満が目標)

■食後3〜4時間をかけて下がってきます。(多く食べて血糖値を上げすぎると、下がるのには時間が長くかかります。)

では、同じ大きさの饅頭とみかんを食べ比べると、どちらが血糖を上昇させるでしょうか?もちろんカロリーの高い饅頭が血糖値を高くさせてしまいます。饅頭を食べても血糖値が140未満でコントロールできればいいですが、みかんの大きさの饅頭を食べると大抵の方が高血糖状態となります。そして、高血糖の状態が長く続くとHbA1cが上昇します。逆にみかん1つくらいでは血糖の上昇はさほど気になりませんから、HbA1cのコントロールにも影響はでにくいと考えられます。(HbA1c:血液検査の値です。過去1〜2ヶ月間の平均的な血糖値の指標です。詳しくは「藍色の風」第4号をご覧下さい。)

次に食べる時間を考えてみましょう。例えば、以下の中から安心できる食べ方はどれでしょうか?
(1)12時の昼食をうどん1杯だけにしたから、食後1時間に饅頭を1個食べた。
(2)12時の昼食をうどん1杯だけにしたから、3時のおやつに饅頭を1個食べた。
(3)12時の昼食をうどん1杯だけにしたから、3時のおやつにみかんを1個食べた。
(4)12時にカツカレーを1人前食べて、3時のおやつにみかんを1個食べた。

考え方として、低カロリーの食べ物は血糖値を大きく上昇させません。しかし、(1)のように“うどん”とはいえ食後1時間では、まだ血糖は上がっていますから、さらにそれに足して食事(間食)をすると血糖値はいつまでも上がったままの状態となってしまいます。ですから、(3)の食べ方がお勧めというわけです。(2)の饅頭は一口饅頭1つや低カロリー甘味料を使用した饅頭にすると安心です。(4)のカツカレーは1/2〜1/3残すと適量となります。うどんやカレーの食べ方は、単品メニューにするより血糖上昇を抑える働きのある食物繊維(野菜、海藻)を組み合わせるのがコツです。

およそのカロリー

温州みかん1個40kcal 饅頭1個300kcal 素うどん1杯300kcal カツカレー1人前1000kcal 

食事とおやつの時間を決めて、一回量を食べすぎないようにすると、血糖コントロールはうまくいきます。「血糖値を下げてから食事をする」習慣をつけたいものですね。

血糖コントロールを悪くさせた食品

和菓子、洋菓子、菓子パン、チョコレート・他の菓子類、アイスクリーム、ジュース・ココア、スポーツドリンク、栄養ドリンク、アルコール、ヨーグルト、餅、はちみつ、黒砂糖、ナッツ類、果物、揚げ物、外食・・・などなど。

しかし、これらの食品でも量とタイミングやちょっとした工夫で安心して食べられます。そんな食べ方を食事相談でみつけていきましょう。

季節を感じる食事(5・6月) 

忙しい日々でしょうが、せめて行事の時は家族そろって食事を楽しみたいものです。家族団らんで健康な心と体を取り戻して下さい。また、伝統的な食事、食文化を次の時代にお伝え下さい。

◇5月2日「八十八夜」 新茶
「夏も近づく八十八夜・・・♪」茶摘み最盛期の八十八夜、縁起を担ぐという意味合いと気候条件も含めて、この時期のお茶は極上品だそうです。ジュースよりお茶をぜひ味わってください。
◇5月5日「端午の節句」 ちまきと柏餅
魔除けの植物と信じられている菖蒲にちなんで「菖蒲の節句」ともいわれます。菖蒲は「勝負」「尚武」にも通じることから男子の出世を願います。菖蒲を飾ったり菖蒲湯に入ったり、菖蒲酒を飲む習慣もできました。柏餅の柏は落葉しないことから縁起物として珍重されているそうです。
◇5月第2日曜日 母の日    
◇6月第3日曜日 父の日
日頃の感謝の気持ちを手作り料理に込めて‥

【管理栄養士:東】

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糖尿病検査における採血のタイミング

糖尿病で血糖コントロールがうまくいっているかどうかは、採血検査で判断されます。しかし血糖値は食事の影響による変動が大きく、毎食前、食後、その他の時間帯と何度も血液検査を行わないと正確な評価ができません。  

そこで外来診療時に血糖値だけでなくHbA1c(ヘモグロビンエーワンシー)の値も測定します。HbA1cは過去1〜2ヶ月の血糖値の平均値を表しているといわれています。そのため、総合的な血糖値のコントロール評価に、食事時間と関係のないHbA1cがよく使われるようになりました。(HbA1cに関しては藍色の風4号に詳しい説明があります)

かつて、糖尿病のコントロールを良くしようとして次のようなことをされる方がありました。
『血糖値が高かったら先生にも悪いけん、食事抜いて病院へ来た。検査が終わったら、おいしいもんを、ようけ食べようと思う。』
これはとても危険なことで、低血糖を引き起こす原因ともなり、糖尿病に対する適切な治療やコントロールができなくなります。

「低血糖って、どんなんえ?」とお尋ねになる方がおられます。以下に記しますのでご注意下さい。

●低血糖とは
低血糖では、血液中の糖分が少なくなりすぎた状態で、手足のふるえ・落ちつかない・冷や汗・動悸・空腹感・めまい・話しにくい・頭の中が混乱する・集中できないなどの症状が起こります。  

インスリン注射や糖尿病薬を服用している方に起こりやすいと言われています。糖尿病の治療をしている方が、食事の時間が遅れたり、いつも以上に体を動かしてエネルギーを消費したりしますと、低血糖を引き起こす可能性が高くなります。(低血糖が起こっていても、自覚症状がない場合もあります)

正常な血糖値を保つ事は重要ですが、数値の変動をあまり気にされなくても‥と思います。前述のように、血糖値は、一日の間で上下をするものだからです。食前と食後の値は違いますし、運動でも変化します。ストレスがかかったりしても血糖値は変動します。また、藍色の風第4号にも記しましたが、HbA1cの値は、検査の前に食事をガマンして血糖値を下げたとしても、改善することはありません。

血液検査に際して、空腹時の採血が望ましい場合には、事前に『次回の来院は食事抜きでお願いします』と声をお掛けしています。それ以外は、食事をされてから来院されて結構です。受け付け事務でお渡ししている『診療予約の覚え書き』には食事の可・不可が記載されていますのでご覧下さい。

【臨床検査技師:田中・宮原】

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日曜・祭日や夜間の救急診療について

坂東ハートクリニックでは日曜・祭日や夜間には皆様の救急診療に対応できません。私の携帯番号への問い合わせも午後10時までとさせていただいています。このような状況で日曜・祭日や午後10時以降の夜間急変時にどのようにするか、不安を感じておられる方が多いと思います。

徳島赤十字病院や徳島県立中央病院また各地の急性期病院がそのような時に対応してくれますが、徳島市沖浜東二丁目の「ふれあい健康館」にも『夜間休日急病診療所』が開設されています。
診療受付時間は月曜〜土曜日は19:30〜23:30 
日曜日・祝日は9:00〜17:00 、18:30〜 23:30です。
内科医と小児科医とが各1名待機しています。急変時には対応できますので、ご利用下さい。
電話 088-622-3576

【坂東】

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心に残る言葉

20年以上前のことでした。少しふくよかな20代女性が入院してきました。外来診断は心房中隔欠損症。この病気は先天性であり、普通は小学校入学前に手術しておくべきものです。しかし、不運なことにその年まで発見されず、息苦しさを感じるようになって紹介されてきました。
心臓カテーテル検査の結果、アイゼンメンジャー症候群と診断されました。これは心房中隔の大きな穴などによって血液がたくさん肺に流れ、肺が障害されて、心臓の手術ができなくなったときにつけられる病名です。

退院後は私が外来主治医になり、薬を調整しながらできるだけ快適な生活が送れるよう、工夫をしました。余命は残り数年です。
その後の外来受診時に「私は赤ちゃんを産めますか?」と突然尋ねられました。命の炎がいつ消えるか、ドキドキしながら診療を続けていた私には寝耳に水の質問です。言下に不可能と告げるのも気の毒に思い、産婦人科の先生に相談してみようと提案しました。産婦人科医は「アイゼンメンジャー化した女性の妊娠出産は困難であり、特に太り気味の女性は極めて危険性が高い。」という極めて当たり前の、冷徹な答えでした。

話の接ぎ穂に困り、心臓のためにも体重を減らして様子をみようと慰めたところ、「先生に会って欲しい人がいます。私のフィアンセです。私のこと、十分説明してください。」とたたみ掛けるように告げられました。結婚を考えた異性がいるとは思ってもおらず、驚きました。
説明には十分な時間が必要なため、面談は日曜日を約束し、二人で病院にきてもらいました。ど
んな男性が現れるかいろいろと想像していたのですが、フィファンセはごくごく普通の人でした。「私のこと、全部説明して下さい。」との要望があり、包み隠さず、すべて話しました。「余命は長くてあと数年。通常の結婚生活にも困難なことが多い。結婚しても子どもを産むことはできず、妊娠すれば母胎も、胎児も生命維持はできない。」非常に話しにくいことでしたが、冷静に事実を述べました。「結婚は断念して、このままの関係でおられた方がよいのでは‥」というニュアンスで説明したように思います。少し肩の荷が降りたような、また、少し後ろめたいような気持ちで面談を終えました。

説明後初めての外来受診も二人でこられました。カーテンをあけて診察室に入り、彼女が椅子に座ったとたん「私達、結婚することにしました。」とうれしそうに報告してくれました。予想外の返事に、私はひと呼吸おいてから「それはおめでとう」といったように思います。
  ほどなく、二人は結婚されました。しかし、病状は次第に悪化し、外来治療では維持できなくなりました。再度入院されましたが、特別な治療があるわけでもありません。心臓移植など、まだまだ不可能な時期であり、私にはなすすべがありませんでした。唇が紫色になりながらも「私、がんばるけん、がんばるけん‥」と彼女は病床で言い続けます。しかし一ヶ月もたたないうちに、夫に見守られながら短い命を閉じてしまいました。

結婚に際して、私はこの男性と同じような行動をとれるだろうかと、何度も何度も自分に問うたことを覚えています。

【坂東】

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受け付け事務からのお願い

当クリニックでは毎月1回、皆様の健康保険証を確認させて戴いています。煩わしいと思われる方があると思いますが、それには次のような事情があります。

皆様の診療が終了すると、診療報酬明細書を毎月作成し、国保連合会や社会保険庁といった組織に対して、診療報酬の保険請求をしています。その際、次のような事務手続き上の誤りが多く、医療機関への診療費支払いが停止されています。

1.『資格喪失後の受診(退職などにより保険証を使用する資格が無くなっているのを忘れて受診した場合)』

2.『記号・番号・患者名の誤り(保険証の表に書いてあります)』

3.『本人・家族の誤り(受診した人が保険本人なのか、家族なのか)』これらの誤りを未然に防ぐために、月に一度、健康保険証を確認させていただいています。

最近は、『平成の大合併』に伴う市町村合併が増え、国民健康保険・社会保険とも番号の変更が多くなっています。住所変更をした際も、保険者番号は同じでも記号や番号が変更になる場合があります。

このような変更がありましたら、受け付け時に変更後の新しい保険証の提示をお願いいたします。また、お手元に保険証が届いていない場合には口頭で結構ですので、私共にお伝え下さい。よろしくお願いいたします。

【受付事務:美馬・湯浅・谷口】

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徳島赤十字病院の歯科

心臓病を持った人の歯科治療では、いろいろと注意しなければならない点があります。

バイアスピリンやパナルジンなどの抗血小板剤やワーファリンを飲んでいる人の歯科治療では、出血に対する配慮が必要です。また心臓弁膜症や先天性の心臓病の方、また肥大型心筋症の方などの歯科診療では、感染性心内膜炎発症を防ぐために、慎重な対応が必要です。
このような方々の歯科診療はこれまでは主に徳島赤十字病院歯科の山之内浩司先生に依頼してきました。しかし同院の歯科・口腔外科は独立採算制に移行し、本年5月1日からは山之内歯科・口腔外科となり、徳島赤十字病院からは分離独立して開業しています。

場所は新しい徳島赤十字病院外来棟の三階にありますが、診療時間や予約への対応などは徳島赤十字病院とは異なります。受診ご希望の方は坂東までお知らせ下さい。

徳島県の糖尿病診療で有名な医師に、板東浩先生がいます。同先生も近藤内科病院の斎藤圭治先生と同じく、徳島大学医学部野球部の後輩です。多方面で活躍されているため、ご存じの方も多いと思います。
その板東浩先生が左記の書籍を出版されました。肥満に関して非常にわかりやすく記載されています。

「当クリニックの患者さんに」と二冊ご寄付いただきました。待合室においてありますので、ごらん下さい。

【坂東】

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